フルスクリーンで楽しむクラシックの醍醐味!「マエストロ6」第1弾~サイモン・ラトル&ベルリン・フィル

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映画館のフルスクリーンで6人の巨匠達によるクラシック・コンサートをいわばヴァーチャルに楽しむバーチャル・コンサートのシリーズ化が決定(その名も「マエストロ6」!)、第1弾として、サー・サイモン・ラトル&ベルリン・フィルのライヴ映像を「新宿バルト9」で鑑賞した。
ラトルといえば、1997年にロンドンのプロムス公演で実演に接しており、本ブログでも、ラトルとベルリン・フィルのアジアツアーを追いかけたドキュメンタリー映画や、ラトルのデビューとなったマーラーの交響曲第5番のDVDをエントリーしている。ベルリン・フィルの生演奏は接していないながら、様々なメディアを通じて、名門オケの演奏を身近に聴ける時代になったものだ。

プログラムは以下の通り。
○ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18(ピアニスト:ラン・ラン)
○チャイコフスキー:「くるみ割り人形」作品71第2幕


収録:2009年12月31日 ベルリン・フィルハーモニー


人気ロシアの二大作曲家によるロシアン・プログラム。2009年大晦日のジルベスター・コンサートのもの。
まずフルスクリーンで楽しめるのが何よりのポイント。会場のベルリン・フィルハーモニーに居合わせたかのような、まさにヴァーチャルな感覚にとらわれてしまう。聴覚的にも指揮台のど真ん前で聴いているかのような臨場感で、ベルリン・フィルのサウンドの厚みを十二分に感じ取る事ができた。ただ、モニタースピーカーのせいでもあるのだろう、高音域がやや耳にきつかった。B&Wというよりは、JBL的なサウンドというべきか。

今回、何よりの収穫だったのは、ベルリン・フィルの奏者達の「今」が垣間見えた事。ホルンのラデク・バボラーク(当年12月にベルリン・フィルを惜しくも退団)、オーボエのアルビレヒト・マイヤー(b.1965)、クラリネットのヴェツェル・フックス…。スター・プレーヤーが数多く並ぶ。
そして、日本人を喜ばせるニュースとしては、コンサートマスターの席に、若手の樫本大進(b.1979)が座っていた事。
1983年から2009年までベルリン・フィルのコンサートマスターを務めた安永徹氏の後任的な意味合いもあったのだろう、2009年6月に弱冠30歳にしてコンマスに内定したが、まだ試用期間中だけに、プレッシャーもあるに違いない。やや力が入りすぎたパフォーマンスだったが、樫本氏の隣に座るもう一人のコンサート・マスター、ダニエル・シュタープラバに支えられ、大役をこなしていたのが印象的だった。
オーケストラ界のトップに君臨するベルリン・フィルにおいても、アジア人の進出は目覚ましい。今回の公演では、コンマスの樫本氏の他に、ビオラ首席の清水直子氏、第1ヴァイオリンの町田琴和氏を含め3名が出演。これに、ラフマニノフではソリストに中国人のラン・ラン(b.1982)が加わるのだから、聴衆もアジア人の勢いを感じ取った事だろう。英国人指揮者(ラトル)が中国人のピアニスト(ラン・ラン)と共に、日本人のコンマス(樫本大進)が率いるドイツのオーケストラ(ベルリン・フィル)でロシア人(ラフマニノフ)の演目を取り上げる…クラシック界もますますインターナショナル化が進んできたようだ。

演奏について触れておきたい。ラフマニノフでのラン・ランのピアノは、抜群のテクニックながら、ややパフォーマンス過多に走りすぎ(特に3楽章)、自分にとってはあまり内面的な感動は残らなかった。ラトルとベルリン・フィルの演奏にもどこか深みが感じられない。
一方のチャイコフスキーは、ベルリン・フィルのヴィルトゥオーゾぶりが前面に発揮された好演。ソロ・シーンで映し出される奏者のパフォーマンスが充分な「絵」になってしまうあたり、やはりベルリン・フィルはソリスト集団だ。ラトルとベルリン・フィルとの関係も9シーズン目に入っており、すっかり手中に収めた演奏に、「ブラヴォ!」と囁くラトルの姿が映し出されていた。アンコールで演奏された第1幕終曲の「雪片のワルツ」では少年少女合唱団が加わり、華やかさが一層増していた。

自宅で何度でも楽しめるDVDやブルーレイもいいが、生演奏と同じ一回限りの感動を心に留めておけるのは、映画館ならではの醍醐味といえるだろう。
また、奏者の身体から湧き出でた音楽というものを感じ取れた点で、視覚的も楽しむ事が出来た。映画館で鑑賞するクラシックは、新たな楽しみ方の一つといえるだろう。

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